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第318話 翔平が出てくる

若菜がどれだけ懇願しても、刃嶋は全く動じなかった。

最後には、彼女を一気に押しのけて、「来い、こいつを縛ってこい」と命令した。

刃嶋はドアの方を向いてそう言った。

しかし、彼の言葉が終わるとしばらくの間、誰も入ってこなかった。

刃嶋は眉をひそめ、疑問を抱きながら、自らドアのところまで行って開けた。「人を縛るために入れと言ったのに、聞こえなかったのか……」

まだ言い終わらないうちに、突然深い視線と目が合った。

男の気迫は強く、無意識に圧迫感を与えた。

「安田さん、どうしてここに?」

翔平は彼の言葉に答えず、長い足を一歩踏み出してそのまま中に入った。若菜は翔平を見た瞬間、まるで救いの神を見つけたかのように、急いで駆け寄った。

「翔平、来てくれた?早く助けて、助けて!」

翔平は足を止めた。

彼女を見下ろし、目の奥には全く同情がなく、むしろ嫌悪感が漂っていた。

「安田さん、ここに来たのは彼女のためじゃないよね?」と刃嶋が言うと、若菜の顔に喜びの色が浮かんだ。

「翔平、連れて行って!お願い、連れて行って!これからはちゃんとあなたの言うことを聞くから、もう三井鈴を挑発しないから」

翔平は冷たく鼻で笑い、言葉には一瞬の温かさもなかった。

「刃嶋、俺が人を連れて行く。2時間後に返す」

刃嶋は何が起こっているのか理解できなかったが、翔平に対抗する勇気はなく、地面にいる若菜をちらっと見て、「安田さん、こんな女のためにそこまで手間をかける価値があるのか?直接京東に放り投げた方がいいんじゃない?」と呟いた。

翔平は目をそらさず、「俺は知らせてるだけだ、相談してるわけじゃない」と言った。

そう言い終わると、

刃嶋の険しい表情を無視して、下の者たちに若菜を連れて行くように命じた。刃嶋は拳を強く握りしめ、壁を叩いた。

「翔平、覚えてろ」

......

翔平は若菜を古風な家に連れて行き、入ると、保安員が容赦なく若菜を地面に投げ捨てた。

若菜はふらふらしながら地面から立ち上がり、翔平に向かって歩いて行った。「翔平、私があなたを気にしてるって知ってるよね?お願い、私を浜白から連れ出して……」

彼女の言葉には祈るような気持ちがこもっていた。

でも翔平は冷たく言った。「若菜、僕が君を連れ出す目的は知ってるよ。本当に知りたいのはただ一つの真実なんだ」

若菜
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